「日銀が利上げを続けたら、不動産価格は下がるのでしょうか?」
前回のテーマに続き、今回は海外の事例を事例を参考にしながら不動産市場について読み解きます。

理論上は「金利が1ポイント上がれば借入可能額は約15%下がる」と言われますが、2022年以降の世界同時利上げ(各国4〜5pt上昇)で実際に起きた住宅価格の下落率は▲5%〜▲18%と大きなばらつきがあり、単純な計算では説明できませんでした。

この記事では、 なぜ国によって価格の動きが違ったのか? そして、これからの日本市場で「価格の底だけを狙う買い方が危険な理由」を、最新データと現場の実感をもとに分かりやすく解説します。

1. 世界の住宅価格が「国によって違う動き」をした3つの理由

同じ利上げ局面でも、国によって住宅価格の動きが大きく異なりました。背景には次の3つの要因があります。

① ローンの金利タイプ(変動 vs 固定)

  • ニュージーランド・スウェーデン:短期固定や変動が主流 → 返済額が直撃 → 価格下落が大きい
  • アメリカ:30年固定が主流 → 返済額は変わらない → 売り急ぎが発生せず、下落は▲5%程度

② 売り出し在庫の消失(固定ローン保有者の“動かない”問題)

固定金利が主流の国(アメリカ・ドイツ)では、既存ローンの返済額が変わらないため売り急ぎが起きず、中古在庫が消えやすい。
利上げ局面でも価格が暴落せず“静かな調整”にとどまりました。

③ 需給バランスの力関係(人口増・住宅不足)

オーストラリアは変動金利が主流で返済負担は増えたものの、記録的な人口増と住宅不足が勝り、過去最高値を更新。

2. 不動産価格が動く「共通プロセス」

世界の事例から見えてくるのは、価格が動く際の共通ルールです。

価格が動く3ステップ ① 取引量の急減 ② 在庫の滞留・累積 ③ 価格の下落(最後に起こる)

売り手は名目価格をギリギリまで粘るため、 いきなり価格が下がることはありません。
まず取引量が減り、在庫が積み上がりきった「最後の段階」で価格調整が起こります。

3. 世界市場を参考にすると日本市場は静かな縮小へ

日本は変動金利が約7割とスウェーデン型に近い構造(暴落)ですが、 日本には“5年ルール・125%ルール” という制度的クッションが存在します。

そのため、

  • 返済不全による投げ売り(暴落)は起こりにくい
  • ただし買い手の予算が追いつかず、取引量が急減
  • 新築・中古の在庫が溜まり、名目価格は横ばい〜緩やかに調整

という “静かな縮小(アメリカ・ドイツ型)” をたどる可能性が高い。

4. 実需のリアル:1億円以上の層が「予算を下げて」流入中

現場で顕著なのが “予算スライド(ダウンサイジング)” です。

  • これまで 1億〜1.2億円 の都心物件を検討していた層が
  • 金利上昇で 8,000万〜9,000万円台 に予算を下げて購入

その結果、1億円以下の良質な実需マンション市場に需要が集中し、価格が下がりづらい状況が続いています。

5. 一都三県のエリア別・リアルな価格動向予測(2026年版)

● 都心・高額帯(1.5億円〜)

投資利回りの再評価で「投資プレミアム」が剥がれ、 5〜10%程度の価格調整が先行して発生。

● 東京駅30〜60分圏(予算6,000万〜9,000万円)

武蔵野・三鷹、調布・府中、川崎・横浜中心部、船橋・津田沼、浦和・大宮など。 予算を下げてきた層 × 元々の実需層が激突し、最も需要が集中。 価格は維持される傾向。

● 大型供給・競合エリア(晴海フラッグ・武蔵小杉など)

同スペックの中古が複数同時に売り出される地域は、 売り手同士の価格競争で適正水準へ軟着陸。
実際に価格調節が始まっている。

6. 「価格の底だけを狙う買い方」が危険な理由

現在の一都三県は、 取引量が減少し、在庫が少しずつ積み上がり始めた“第一段階” にあります。
「じゃあ価格が下がるまで待てばいいのでは?」 と思うかもしれませんが、ここに大きな落とし穴があります。

▼ 価格が少し下がっても、総住居費はむしろ増える可能性

今後10年は、

  • 物価上昇
  • 金利上昇
  • 管理費・修繕積立金の値上げ
  • 人口減少と都心集中

が同時進行します。

つまり、 価格が少し下がっても、金利や維持費が上がれば総住居費は増える。

「底値を待っていた人の方が、毎月のキャッシュフローが重くなる」 という本末転倒な事態が十分に起こり得ます。

7. これからの不動産選びで見るべき“2つの指標”

① 金利・維持費込みの「総住居費」

  • ローン返済額
  • 将来の金利上昇リスク
  • 管理費・修繕積立金の値上げ幅

これらを含めた “毎月・生涯の住居費” で判断すること。

② 物件の「流動性(売りやすさ・貸しやすさ)」

人口減少時代では、立地・駅距離・間取り・築年数・管理状態が流動性を左右します。

✨ まとめ:価格だけではなく「総住居費 × 流動性」で選ぶ時代へ

「金利が上がるから価格が下がるはず」と静観するのではなく、 これからの不動産選びは、

  • 金利上昇や維持費増に耐えうる資金計画
  • 将来も需要が落ちない、在庫競争に巻き込まれない立地選び

この2つを軸にすることが重要です。

2026年以降の市場は、 “価格だけを見ている人ほど損をする” 時代に入ります。

賢いマイホーム購入・資産形成を進めるために、 ぜひ「総住居費」と「流動性」という2つの視点を持って検討してみてください。